(飯沼)
今日は旧・現社会主義国を中心にラジオ放送をモニターしている社団法人ラヂオプレスのために識者、専門家にインタビューということになりました。私は岡崎久彦元サウジアラビア、タイ駐在大使にお話を聞きたいと思います。ラヂオプレスが果たしている役割というのは非常に大きいと思うんでね。私達は新聞記者としてラヂオプレスの報道を新聞への転載や資料として随分使わせていただきました。配信を受けているわけです。マスコミのみならず、日本全体にとってこういう情報というものがどれだけ大事かということは改めて再確認するのも非常に意義があるだろうと思います。それでは岡崎大使、抽象的な質問ですが、国家にとって情報というのは相当な重要性をもつと思いますが。
(岡崎)
政策というものは情報が前提なんですよね。特に外交政策、それから、軍事政策ですね。これは相手がありますからね。国内政策というのは、日本国内の事情で一方的に決めればいいんですよ。来年、橋を20かけるといって、予算をとったら、その通りにできるんですよ。ところが対外政策となりますと、外国に橋1本つくってやるといったって、今度、向こうの国内事情があって、ごたごたして結局かからないときがあり ますよ。
結局、向こうの情勢を全部知った上でないと何もできないんですよね。そこに日本の一番の欠点が見られます。国内で決めたことだからなんでもできると思うと、これは間違いなんですね。外国の情報を全部知った上で、できる範囲で国益を守る。それは本来の外交なんですよね。そのもとは情報なんですね。
(飯沼)
今、大使がおっしゃられたように、国内政策の場合には世論がストレートに反映しても差し支えないわけですね。ところが、外交政策の場合には、あるいは安全保障政策の場合には、これはもう世論だけでもってやるわけにいかないというファクターが大きいと思うんですね。それで、包括的な議論になりますが、ラヂオプレスが果たしている役割というものは非常に大きいと思うのですが、その辺いかがでしょうか。
(岡崎)
おそらく外務省の人間で、私ほどお世話になった人はないと思いますよ。私がいたところは、課長ポストが全部情報部なんですよ。あの頃は外務省に情報企画部というのがあった。私はその分析課長、調査課長、調査室長、みんなやったんです。課長のポストはそれしか知らない。それから、次に、防衛庁へ行って、国際情報関係の参事官をやった。帰ってきて、また、情報調査局長ですから、情報しかしていないんですよ。 その私の経験では、9割までは公開情報が大事なんですよ。これはラヂオプレス(RP)がなかったら、なんにも仕事になっていないですね。
(飯沼)
ワシントンでは、国務省が全世界のラヂオをモニターしていまして、例えば当時ですと、ベトナムを含めてインドシナで1冊、それから、中国が1冊、東南アジアが1冊、それから、日本、韓国が1冊という風に、おそらく十数冊を毎日プリンとして、 翌日の朝にはもう国務省のプレスルームに出るんですね。もちろん記者だけでなく、外交官や分析官もこれらを活用しています。こんなことは、日本の外務省では実際にでき てないでしょうし、これをラヂオプレスが民間企業として代行しているわけですね。
(岡崎)
本来は政府がすべきことなんですよ。ところが、戦争が終わったときに、外務省が占領下で終戦連絡事務局になっちゃった。それで人員整理をやったんです。その時に吉田さんが外務大臣をやっていまして、外務省が率先して一番人を切ったんです。それで、未だに外務省がものすごく定員不足なんです。定員不足の中で、それから約20年間は懸案処理ばっかりやっていたんです。要するに、あちこちとの戦後処理ですよ。 だから情報とか分析というものに人を全然割けない。そのあいだ、日本の情報というのはバランスのとれた発展をしていないんですよ。ところが、それが終わってそろそろ本 当はそっちの方を拡充すべき時になったら、低成長に入っちゃった。それ以来、情報部門へのお金がすごく遅れているんですよ。
本来は、RPというのは外務省の中にも抱え込んでちゃんとやるべきなんだけれども、それができてないんなら、70年代に入って相当大量の予算をつけるべきだった。それがついてないんですよ。それが日本外交の今のところの致命的な遅れになっていますね。
(飯沼)
おっしゃった点、まさに同感なんです。現在、外務省がラヂオプレスに払っているお金というのは、配信料などで年間1億8000万円ですね。マスコミも、大手のところでも、一社せいぜい1500万円ぐらいしか払ってないわけですね。したがって、本当に網羅した生の情報に基づいてのマスコミ報道もなかなか不十分なところがあります。
(岡崎)
日本人というのは情報関心がものすごく薄いんですかね。特に生の情報が大事だというのを理解していないんですよね。例えばキューバ危機があって、それがラジオで流れたら、パリでも砂糖が買えなくなってしまうのですよ。みんな買っちゃうから。キューバ危機があって、米ソ戦争があったら、ソ連の潜水艦が大西洋で動く。そうしたら、船が止まりますから、それで砂糖が来ない。戦争を知っていますからね。 私だって、当時のソ連がアフガニスタンには行ったというのを聞いたとたんに、その辺のスーパーに行って買えるものを買ったんですよ。だけど、日本人にはそういう世界的視野に立つ感覚はないですからね。石油ショックでもってトイレットペーパーがなくなったという訳の分からない反応しかない。ですから、まずは公開情報の一番もとの、事実の情報を理解するところから始めないと、日本人の情報に対する識見というものが育たないですね。
(飯沼)
ラヂオプレスの場合には、いわゆる普通の営利主義的、あるいは商業主義的メディアとしてやるには、非常に不利な立場にあるわけですね。最近の例でラヂオプ レスが活躍したのは、金日成主席の死去ですね。事前の予告をして、そして、NHKや 放送会社はみんなスタンバイした。新聞もRPの予告で準備をした。しかし実際にその記事が、 あるいはそのニュースが放送で出たり、新聞に載ったりしたときには、RPというもの の姿は見えないわけです。非常に重要な役割を担いながら、あまりにも地味である。 決してこういう仕事というのは派手である必要はないと思うんですが、そこで仕事をしているのに必要かつ十分な報酬なり、尊敬も含めて、そういったものを受け取るべ きだと思いますね。それだけの体制はやはり作らなきゃならない。
(岡崎)
米中関係の悪化なんて、今年の春から9月までのRPを読んでいますと、それはものすごくはっきり分かりますよね。今年の1月30日に江沢民が台湾に9項目提案した頃の柔軟な姿勢。あれが今の強硬姿勢にどう変わったかね。これは、総括的なものを読んでも分かりませんけれども、RPを読むと日にちまで分かりますよ。その日にちが、 これはまさに一番の問題なんだけれども、李登輝・台湾総統のアメリカ訪問が決まったとたんに変わってはないんですよ。その後の、中国内部の何らかの権力闘争というか、 意見の対立があって変わっているんですね。そのタイミングのずれがある。そのあたりで中国の軍の発言力が強くなったのが分かるんですよ。それは事実だけ見ているから分かる話ですね。
(飯沼)
特にそういう意味では、中国、北朝鮮、あるいはベトナムなどの情報については非常に重要な役割を果たすわけですけれども、それ以外に、不断、我々が目を配ってないところの放送も、本来なら十分にカバーしてもらえる体制をつくらなきゃいけないですね。当然、資金的な裏付けが必要なんで・・・。
(岡崎)
それをどうしたらいいか。本当はRPにもっとしっかりして欲しい。そうあって欲しいんですがね。今の日本では、まず情報に対する観念から教育しないと、情報需要 というものが起きてこないんですよね。これは私は二十年来、もっと情報関心を持つべきだといっていますけれど長期的な話で、それはそれとして、今、情報需要がなくても、お金の面で育てる気がなきゃ駄目ですね。
(飯沼)
今年一月の阪神大震災であれだけのショックを受けて、さんざん反省があっ て、その中で情報収集の体制が極めて弱いということがいわれたんですね。これはオウム真理教事件についてもそうなんです。こういう場合に、外務省をはじめ、公安調査庁とか、情報を扱う国家機関をもっと有機的に結びつけ、かつ、政治のあり方を含めて、 情報というものに対する一種の大衆教育がやっぱり必要ですね。
(岡崎)
確かに情報が弱いんですよ。そうすると、すぐ情報収集の体制という話になる。それで、人工衛星の話とか、もっとひどい話になると、ミグ25が着いたときに情報が官邸に届く時間が遅かったから伝達システムをどうするとかね。結局、それは情報というものが分かってないからそういうことになる。情報の何が大事かというと 、公開情報を漏れなく適切にとっていることが一番大事なんですよ。それをRPがやっているんですね。ところが、今の日本ですと、際物情報ピューッと入るんですよ。ところが、本当のしっかりした情報が入らない。しかも、際物情報が入って先入観ができると、事実の情報の中で入れなきゃいけないものが落ちている。これで、いかに日本が間違えたかね。
日本が戦争に入る前に、日本の軍部は、とにかく、ドイツが勝つという情報しか入れない。スウェーデンから小野寺さんが、ドイツは勝たないよという情報を送ると、ついにベルリン駐在の武官が怒っちゃってね。ドイツに関する判断はベルリンが行うと言う。 あるだけの情報は見なきゃいけないものを、先入観で一部隠しちゃう。情報のイロハの間違いをやっているんですよね。
そのためには、必要なのは本当の公開情報ですよ。聞き込み情報とか秘密の情報というのは大したことがないんですよ。ビフテキがでて、それにソースをかけるかどうかみたいなものですよ。ビフテキを食うかどうかが問題なんですよ。
(飯沼)
確かに、それについてアメリカの国務省関係のあるスペシャリストが言っていましたけれども、北朝鮮の動向を知るには、誰が、いつ、どこに、いたか。どこを旅行 していたか。これをきちっと追いなさいと私は言われたことがあるんですが、やっぱりそういうことが非常に大事ですね。
(岡崎)
大事なのは日誌と、発言のテキストそのもの。あとは、発言した人の経歴、バ ックグラウンド、その3つだけ分かっていて、もう9割わかりますよ。
(飯沼)
ロシア関係、中国関係、北朝鮮と、各論としても、RPの役割、そして、果たしてきた仕事というものは非常に大きいものであるということがわかりました。ただ、 RPは今のままではまずいでしょうね。
21世紀に向けてRPはどうあるべきかということで、まさにこれからの話というのは 21世紀に向けて全部つながっていくわけです が、このままではまずい。どうしたらいいですか。
(岡崎)
私も、21世紀に向けて何をしたらいいかといろいろ考えているのですが、学問で何が一番大事かと思うと、地域研究が大事なような気がするんですよ。例えば私が タイの経済を勉強するとする。その場合に、意見を聞きたい人は、一流の経済学者じゃないですよ。経済を知らない人でも、政治でも社会でもなんでもいいから、タイのことを知っている人に聞きますよ。つまり、タイの経済とタイの政治社会との差の方が、タイの経済と、アメリカの経済の差よりも小さいんですよ。地域研究というものは大事なんですよね。
地域研究というのは、その国の歴史から哲学から全部あります。20世紀の学問というのは分化しちゃったですからね。孔子の言う「学びて思わなざれば即ち罔し」、「罔し」というのは何も見えないということですね。それから、「思ひて学ばざれば即ち殆し」、どういうことかというと、事実関係を調べるだけでものを考えなきゃ、何も見えてこない。といって、観念的な思考だけあって、事実関係を勉強しないと、めちゃくちゃになっちゃう。キッシンジャーなんというのは、ヨーロッパのことは知っているから、ヨーロッパのことを書けば、きちんと書ける。あの人はもともと観念的思考ですからね。ところがアジアのことを書くと、めちゃくちゃになっちゃう。やはり地域研究のもとがしっかりしているということ、これが一番大事なような気がするんです。 19世紀に戻るんですけれども、イギリスの外交官というのは世界中の歴史、地誌を書 いた。日本と中国だけ違いますけれども、ペルシャとかインドだって歴史なんかなかったんですからね。それも主観はみんな排除して事実だけを書いた。それをしないと、本 当は危ういんですよね。
(飯沼)
19世紀にイギリスが先進国のトップに立てた一つのファクターはロイターな んですね。ロイターがビジネスニュースというものを徹底的に流したわけですよ。いわばインフォメーション、情報を売ったわけです。これが、結局、イギリスが7つ能美を制覇する大帝国になった基礎の一つなんですね。綿花とか、そういった商品のマーケット情報です。これを当時から、19世紀から売っていたわけですね。 これを見ても、これから21世紀に向けても、いうまでもなく情報というのは大事だし、それから、先進国、あるいは大国といわれるところはみんな情報管理、あるいは情 報の動きというものが非常に活発で、しかもスムーズに行われている。日本が、少なくとも大国と見られてる状況にあるわけですね。普通の国としてやっていくには、それな りの、今、大使がいわれたように事実のファクトをつかまえること。このファクトをつかまえることが、今やっぱり非常に弱い。基礎としての情報収集ということに、これはいわば官だの民だのということではなくて、全体として総合的に取り組まねばならない のじゃないかと思うわけですね。
(岡崎)
他方事実だけというと、物事の軽重を見失っちゃうんですよ。なんだかわからなくなってしまう。結局、事実をしょっちゅう見ていて、見えない筋がわかる人が必要なので、これは年期がいるんですね。そういう財産がRPにはあるんですよ。その種を、 とにかく滅ぼしては絶対いけないです。とにかく保護して育てなきゃいけない。これは やっぱり政府、政治家の理解が必要でしょうね。
(飯沼)
絶対必要ですね。
(岡崎)
それから、民間の調査部でもそれが正攻法なんですよ。私は、RPなんかの情報 を集めて民間の方々に指導させていだだいているわけですが、時間がかかります。しかし、これが正攻法だと思っています。
(飯沼)
一つ、マルチメディア時代といわれる場合、今、大体日本人が議論している多くのことは、ハードのことばかり議論しているですね。ところが、要するにソフト、ソフトというのはつまり、コンテンツですよ、中身。これは実は今のところまだ日本ではコンテンツに対して代償を得ていないんです。いろいろな新聞社がインターネットで情報のアクセスを受け付けているけれども、果たしてどこまでまともに金を取っている か。とにかく今のところはイメージアップでやろうじゃないかという線でやっていると ころがかなりある。それが情報無料化ということの危険性を今、我々は非常に感じるわけですね。
ラヂオプレスの情報が万一そういうようなところに入った場合、どうやってマネージするのか、このところが非常に大事だろうと思うんですね。ですから、今後、マルチメディア時代に向かってのRPのあり方ということも新しい課題としてでてくるだろうと思うんですね。これは当然、RPというものは今までファックスでずっと送ってきていた。だけど、これはファックスだけではなくて、今や日本語の原稿なりインフォメーションは、紙を使わずにそのままコンピュータに入って印字できるシステムまでつながっていくわけです。例えば演説全文とか、そういう速報というようなものにどう対応するかということを、だれか責任を持って考えなければなりません。RPも、いかんせんこのわずかな予算の中でそういうようなことは難しいでしょう。情報マネージメントのやり方については大いに考える必要があるだろうと思うんですね。 その意味では、RPは全部国家の機関にもう一回してしまえとは言いませんが、公益法人としてきちっと国も、他の民間の情報機関も、総合的に関与する組織にしたらどうでしょうか。例えば昨年のメキシコの通貨危機、ああいったものについての情報がもう少し早く入っていれば、いろいろと違っていただろうと思うんですね。ですから、できることならば、現在はロシア、中国、北朝鮮に集中的に行われているRPの活動を、途上国全 体の、例えば環境問題とか経済問題のようなところにまでジャンルを拡げられるくらいに日本の情報網が発達すべきでしょう。まさに即時性ですね。大使、いかがでしょう。
(岡崎)
これをするには、例えばASEAN、今経済が一番盛んですよね。それからインド、ああいうところの経済情報が入ってくるのを見て、その見えない筋を見いだせる人間を育てなきゃいけない。それは今までRPは持っていない。これには資本の投下と時間が要りますよね。そうすると、これをもし経済界が認めて、そのために投資してくれれば、5年もすればできるようになるでしょうね。
(飯沼)
なりますね。技術的には、もうそろそろできるんです。
(岡崎)
技術じゃなしに、これは人間なんですよ。見えない筋が見えてくる人を育てなきゃいけないんですね。ものすごくたくさん入ってくる情報の中で、これが大事な経済情報というのがスーッと見える人-政治問題ではRPはすでにできるわけですよ、蓄積があるからね。
キッシンジャーの訪中は、全く恥ずかしいんだけれども、あれを教えてもらった唯一の日本人です。それがわからなかった。どうしてかというと、僕はワシントンに行って、 初め経済をやっていた。経済をやっているときは遠慮して昔の友達と誰もつきあわなかった。それから情報の参事官にポストが変わったものだから、それというわけで昔の連中に全部会う。ジョン・ホールドリッジに会ったとき、「これから1週間したら重大な旅に出る。だけど、古い友人は決して見捨てないから安心しろ」と言われたのです。それは南ベトナムのことだと思いましたよ。彼は「これからすることはカンサス・スピー チを読めばわかる」と言うんですよ。今読めば中国だとわかりますよ。誰が読んでもわかる、今になって読めばね。
それまでずっと政務をやっていれば良かったんですけれど、初めて行って挨拶したばかりでしょう。ちらっと聞いてきた話を「大変だ、大変だ」というのもちょっと恥ずかし い気がして、それから、ホールドリッジにあったのも5年ぶりぐらい。彼の深刻な顔が、いつもそういう顔をしているのか、その時特に深刻だったのかも判断が付かなかった。カンサス・スピーチを今読んだらちゃんと書いてありますよ。
でも、あのときの唯一の前兆が名古屋での卓球大会なわけですよ。それで、アメリカチームが対戦したんですから、あれはおっかないことですよ。そういうヒントをどこまで広げられるかというのは、ある程度発想の力にもなるんですよね。やっぱり固定観念にとらわれていると、もうそのヒントがノーヒントになっちゃう。
(飯沼)
しかし、大使、歴史をifで言ってはいけないんだけれども、もしその時にわかっていたら、何か変わっていましたか、日本が。
(岡崎)
端的に言えば、佐藤から福田に行ったかもしれません、佐藤から田中へ行かないでね。あれで、今までの佐藤のやっていたことはなんだということで、国中ごうごうたることになったですね。それで、日中正常化をやるんだから田中内閣ということになった。
(飯沼)
その意味では、良かったんですか、悪かったんですか。
(岡崎)
僕は悪いと思ったんです。と言うより、キッシンジャーがちゃんと日本に相談してくれていたら、それまで日本とアメリカは中国政策は全く一致していたんだから、 もう一度また一緒にいけるわけですよ。上海コミュニケの時に日本も同一歩調ならば、 中国側は「中国は一つ。台湾はその一省」というのに対して、上海コミュニケは、「台湾海峡両側の中国人は中国を一つと言っている。それをアメリカが認める」、という表現ですから、これにしておけば何ということはなかった。台湾が独立宣言をしたら、それきりの話だから。ところが、キッシンジャーが教えてくれないおかげで日米が分断されて、分断工作にのったものだから、今度、日本が国交正常化するときは一歩進まなければいけない。その次のアメリカの正常化はまた一歩進む。こうやってだんだんと 追いつめられていった。
だから、あのときの上海コミュニケのままで日米の歩調がぴたっとあっていれば、少なくとも、あれから7年間は、東京にもワシントンと同じように中華人民共和国の旗と中華民国の旗が両方立っていた。7年後もそれを変える必要もなかったかもしれない。
(飯沼)
公開情報の大切さをつくづくしらされた歴史的な一例でしたね。ありがとうございました。
今回の岡崎久彦・元サウジアラビア、タイ駐在大使とのインタビューでは、そんな私の小さな経験だけでは知ることのできない重要な事実を教えていただいた。「情報」というと、普通の人なら、何かスパイがとってくるような秘密情報をすぐ思い浮かべるだろう。だが、岡崎大使は、外交政策、安全保障政策にとって最も重要なのは、公開情報を継続して読み、分析することだと言う。外国の情勢や政策を知るための 情報の90パーセントは、継続して見る公開情報から得られると述べておられる。 岡崎大使ご自身が、外務省で情報畑を歩き、防衛庁に勤務された専門家であるだけに、 その発言には重みがある。「常に情報にタッチしているプロが必要」なのである。 いま日本に、外国、特に日本の脅威になるかもしれない旧・現社会主義国の動きを、放送モニターを通じて知らせてくれているのは、ラヂオプレスしかない。日本の情報収集体制の弱さは常に批判されてきたが、いまあるラヂオプレスの作業を、国と民間が協調 して充実、拡大することがいかに大事か、改めて認識した。
おわり