◆軍事・経済大国 中国にどう対応
巨大な軍事・経済国家へと急激な変貎(へんぼう)を遂げ始めた中国。変貎は、台湾海峡を含む東アジアにどう影響するのか。日本、米国、台湾は中国にどう対応すべきなのか−。6月20日、都内で開かれたシンポジウム「台湾海峡の平和と安定のための安全保障対話」(岡崎研究所など主催、産経新聞社後援)には日米台政府に影響力を持つ現職の国会議員や政府高官、元将官らが参加した。本音の議論からは、決して平和とはいえない東アジア情勢が垣間見えた。
□基調講演 岡崎研究所所長・元駐タイ大使 岡崎久彦氏
◆極東安定へ日米台連携を
中国の軍事力増大に対抗するには、日米同盟が重要だ。朝鮮半島や台湾海峡の軍事比較には多様な数字があるが、日本をゼロで計算している。だが、日本の海空軍力は世界2位。極東危機は多分10−20年先だが、日米同盟対中国というくくりで計算できれば、極東が非常に安定する。
台湾の戦略的重要性を結局、米国は認めざるを得ない。米国の中台問題での立場は平和解決だが経済・技術力を持つ台湾を中国が併合すれば、バランス・オブ・パワーが変わる。平和統一と言っても脅迫の下。台湾人が本当に平和的に一緒になることはない。平和の名の下に台湾を中国に渡せば、アジアでの米国の信頼は失われる。経済では華僑支配の東アジア全体が中国の勢力圏に入る。日本にとり国際政治の地殻変動だ。
台湾は8年間、陳水扁政権が続いた。政権交代は民主主義の中では理解できるが、一度代わったら元に戻れるか。米中は現状維持で合意しているが、中国は台湾統一は捨てていない。中国にとり、要求をのむ台湾政権があるか否かが非常に大事。国民党政権の間は統一の絶好機なのだ。台湾が中国のプロパガンダに負けることは十分あり得る。中国は「台中経済交流が強くなり、切っても切れなくなる。自然統一される」と言うが違う。米国とカナダが経済で相互依存しても、国家統合とは関係ないからだ。
ただ、中国だけは経済力を政治力に転化できる。例えば、米政府がカナダのビジネスマンに対して「併合を支持しろ。さもないと、商売の邪魔するぞ」と圧力をかければ、カナダに対し力を持てる。そういうことを中国はやっている。カネと工作人員をふんだんに使える独裁国家ならできる。「靖国神社参拝に反対せねば、商売をやめる」と言われれば、反対せざるを得ない。WTO(世界貿易機関)の精神に反する非合法なやり方に対抗しないと危ない。世界中のビジネスマンが中国の言うことを聞かないといけなくなる。国際的制度を作り世界中で、やめさせるほか、方法はない。
中国人は「台湾の商船を1隻沈めたら台湾はパニックになる」と言うが、軍事的脅迫に台湾が屈服すれば、商売もできなくなる。対抗上、米国は非常に重大な役割を担う。通常戦力で中国が台湾を占領する力は、10年先はわからないが、まだない。「米国は台湾を見捨てない」との自信を、台湾人が持てば独立を保てる。ただ、台湾側の政権がフォース・マジュール(不可抗力)と感じる、あるいは時の指導者がそれを感じたふりをして「仕方ないから、統一を受け入れる」と言ってしまう事態が考えられる。これを防ぐため、米台協議が不可欠というのが私の提案。外交・軍事を含めた総合戦略的共同演習を反復し、憂慮する事態があれば即、米政府に伝える−などをシミュレーションしておく。米政府・議会に意思をハッキリ出させるメカニズムが大事だ。
陳文賢 台湾が自決権を守る際、日米、特に米国が極めて重要だがブッシュ、陳水扁政権は数度困難に直面した。陳総統の5月の中米訪問時、米国に通過滞在を求めたが給油限定の滞在のみが許可、総統は米国に寄らなかった。台湾人は、選挙で選ばれた総統がこのような目に遭い大変衝撃を受けた。
林 総統選は台湾の民主化だけでなく、地域安全保障にも影響する。馬英九国民党主席は非常に強力な民主進歩党の相手候補になるが親中、反日なことを忘れてはならない。「馬総統」では、日米との関係に影響。地域情勢も予測不可能になる。指導力が欠如し優柔不断だからだ。日米から台湾の民主主義を認めると支持される必要がある。日米同盟強化は台湾の国益。安保思想の共通化を、もっと強力な形で制度化すべきだ。
サコダ 中国潜水艦の日本領海侵犯など緊張が高まるが、日米同盟がカギ。かつて日本は「日米同盟タダ乗り」と批判されたが、今はない。シンポジウムで示された日本の立場を、政府間対話でも聞く必要がある。米国ではアフガニスタン、イラクが注目されているが、アジアに焦点を当て日本と調整しながら、東アジア戦略を維持していく必要がある。
林 米国には台湾関係法があるが、日本は台湾と政治関係を持たない。日台関係を経済・政治・安保面で強化。日本が地域安保で重責を担えば日米台の国益になるので、日本の「普通の国」化を期待する。
チャプリン 米国にとり、太平洋地域での同盟国の必要性が高まっている。米国単独ですべてこなすことはできない。能力の高い軍事力を保有する日本の貢献がゼロである事態は考えられない。日本の国際社会との軍事活動を期待する。
シュライバー 2008年は台湾総統や米大統領選挙、北京五輪など、おのおのの国で大きな意味を持つ出来事があるが、大きな懸念がある。軍拡を続ける中国軍の能力が一層台湾に優位に立つことが当然考えられるが、日米台は台湾の将来について合意形成していない。一方で、米国は戦略資源をイラク、アフガンに投じてしまっている。日米台が集団的行動をとれないまま日米台関係や日米同盟、地域の今後に、巨大な影響を及ぼす事態が進んでいる。
金田 軍事上は中国有利は明白。米国の台湾関係法に基づく台湾の武器購入が順調でないのは、台湾内部の政治対立に起因している。弾道ミサイルは圧倒的に中国が勝る。航空優勢は06年時点では間違いなく台湾。海上優勢は台湾がやや有利かほぼ同じだが、10年には明らかに中国有利に。中国は遅れていた海空軍能力や強襲上陸能力を改善し総合力を高めている。
Q (会場の有識者の質問)金田氏の軍事分析を米側はどう考えるか。シュライバー 中国政治指導者は軍に対台湾作戦能力を要求。遠洋海軍展開能力など他の戦略目標構築も目指している。
チャプリン 今年、中国潜水艦が浮上せずにグアムまで行き、日本領海まで来て、迷ったかに見えたが違う。繰り返されれば、能力は向上する。
金田 中国軍は指揮・統制・通信・コンピューター・情報・監視・偵察を一元化した指揮統制システムへの改善にも着手。昨年には、ロシアと合同演習した。名目は対テロだが、明らかに近代化された敵への攻撃訓練だった。中台軍事均衡が急速に崩れつつある。米国は台湾関係法に基づき米国兵器に優先順位を付け逐次供給することが、台湾にとり必要だ。
Q 日米は南方を意識した米軍再編を企図。台湾占領を日米が許さないと中国は認識した。台湾も役割を強化してほしい。蔡 台湾は今後2年間、軍事改革を強化、共同演習に参加し即応性を高める。国防予算を増やし、国内総生産の3%確保を08年までに実現。米国の軍事援助を得て、政治的関係もより緊密化、日米を戦略的パートナーとして中国が攻撃に出ぬよう域内安保体制を構築したい。一方で、台湾は海峡の現状を変えるつもりはない。今後2年間は中台対話再開の絶好機。双方向で交渉を進める態勢を整えようとしている。緊張緩和のため、海峡での軍事緩衝地帯創設も考えている。ただ、平和環境構築に向け、米国が中国を関与させる必要があると判断するのはわかるが、台湾を犠牲にしてはならない。
信田 ポスト小泉の台湾海峡に与える影響を話す。安倍晋三官房長官と福田康夫元官房長官に関し、メディアは違いを誇張し過ぎ。安倍氏は小泉純一郎首相同様、対中強硬姿勢だが、福田氏は加藤紘一元自民党幹事長のように、米中日関係は正三角形だとは言っていない。小泉政権で福田氏は、日米同盟強化やテロ対策とイラク人道復興支援の両特別措置法成立に尽力した。もっとも、福田氏は友好的に中国に臨むだろう。台湾にとり、日台の自由貿易協定(FTA)確立が重要だが、日本政府は真剣でないから、政治指導力がないと日台のFTAを結べない。安倍氏はその意図があるが福田氏はない。そこが違いだ。
Q 中国軍拡の背景には対日米貿易拡大の利益の軍事への充当がある。対中貿易を政治的にコントロールすべきだ。シュライバー 事実だが、強い制裁や貿易を部分制限するのか。政治的に持続可能なのか。天安門事件への制裁として、日米はEU(欧州連合)が武器禁輸を解除しないよう担保している。現状でいい。
蔡 日米は中国の最大投資国、中国の外貨準備高は世界最大だ。輸出黒字を軍事に充てられる。ロシアから調達する中国駆逐艦は、かつては7−10年分割で払っていたが、今は即金。台湾投資も、中国軍近代化につながっている。安保と貿易の関係を日米もぜひ、検討してほしい。
吉崎 21世紀は安保ではアフガン、イラク戦争、北朝鮮とイランの核開発など、良いことがないが、経済では世界経済の成長率は5%近くで、貿易の伸びも大きい。米中に牽引(けんいん)されたからだ。米国の貿易赤字7700億ドル(05年)のうち、中国が最大の26%を占める。中国は対米黒字だが日台、韓国には赤字。米国にモノを売るためアジアから部品を買うからで、全体の黒字は大きくない。中国経済は輸出が命で人民元を強く安定させておく必要がある。昨夏、管理フロート制に移行したが、実は人為的為替操作をしている。レートを上げた瞬間、競争力を失うからだ。中国がドルを買い続ける結果、外貨準備高は日本を超え世界一。おかげで、米国は巨額の貿易赤字なのにドルが安定している。米国の貿易赤字と中国の外貨準備高が年々膨れ日台が潤うが、大きすぎる中国経済がつまずくとこちらも傷つく。ゼーリック前米国務副長官は安保面で「中国は責任あるステークホルダー(利害関係国)であるべき」と言ったが、経済は逆。米国は中国経済の顧客、台湾は株主、日本は技術顧問で、われわれが中国株式会社の利害共有者でなければならない。
陳博志 中国の経済規模と不公平な政策は他国には打撃と脅威となる。中南米など途上国に輸入・投資をエサに政治的影響力を行使。ASEAN(東南アジア諸国連合)にてこ入れし、東アジア勢力図を中国有利に塗り替えようとしている。台湾企業家に大陸投資への優遇措置をちらつかせ、親中派政治家に投票し「1つの中国」政策を推進するよう圧力をかけ、国論を分断しようともしている。
呉 中国は台湾のWHO(世界保健機関)オブザーバー資格に反対した。台湾はWTOの中で、中国と対等の対話を望んでいるが中国は拒否。WTO規定で、加盟国は地域取り決めを結べるのに、中国は台湾のFTA締結を妨害、日米も及び腰だ。台湾が日米とFTAを結べば、韓国やASEANも参加。中国と対抗できる。日米は軍事だけでなく経済・金融でも台湾に協力すべきだ。台湾の金融危機は周辺国にも影響する。
阿久津 日米台経済協力でも安保の視点が重要だが3カ国関係は中国の経済的台頭にもかかわらず脆弱(ぜいじゃく)。日米はWTOでの中台対話を支持すべきだ。日本は台湾とのFTA締結に消極的ではないが、締結にいたっていない。日米は台湾をASEANでのFTA協議や東アジアの金融対話に巻き込める。台湾を世界経済に組み入れるべきだ。日米台は安保関係を静かに強化、中国との経済関係とは別個に扱うべきだ。
チャンバース 台湾がFTA交渉から排除され弱体化すると、日米の国益に反する。一方、中国に輸出する知的財産が将来、われわれに不利にならないよう管理しなければならない。
タシク 94年当時、中国はすでに15年間、年9%前後の成長を続け、成長は持続不可能と考えた。だが、06年まで年率10%近くで成長を継続。20年までペースを維持するのではないか。もしそうなら、中国経済は日本を超え米国並みに。政治・軍事力でアジアを圧倒する。中国は軍事・経済力による脅しは総合国力につながると思っている。中国社会主義は総合国力を高めるのが目的で、社会主義ではなくナショナリズム。15年後、中国がアジア最強となれば台湾は消滅、日本やフィリピンは台湾が今、経験中の圧力を受ける。日米台が定期的フォーラムで、中国のIT(情報技術)・貿易・金融違反に関し共同対抗戦略を練り上げるべきだ。
吉崎 利害共有者への経済制限は困難。中国の昨年の9%成長のうち3・5%は貿易による。仮に今年の米国の対中赤字が前年並みにとどまれば、その分の成長は吹き飛び、雇用問題を吸収できない。
陳博志 中国の成長は他国の犠牲で成立している。93年前後の人民元切り下げ後、中国は多くの輸出機会を他国から得た。ASEAN諸国の対米輸出比率は95年以降、大幅低下。その分の市場シェアが中国に移った。台湾の労働集約型製品の大半も中国製になった。中国は台湾のハイテク製品の対米輸出を年20%ずつ、日本のハイテクの対米輸出の10%も奪っている。人民元を切り上げれば中国の成長率は下がる。一部専門家は切り上げは中国や世界経済に打撃だと指摘するが、切り上げで米国貿易赤字も減る。対中債務が減れば、米国はASEANなど発展途上国からの輸入を増やし、発展途上国は日台から原材料を輸入する。需要が中国から発展途上国に移るのだ。
チャンバース 2400億ドル分の財物が中国から米国に流れるが、生産地が中国というだけで日米台韓企業の製品も混じっている。この流れの混乱は日韓経済の波乱要因にもなる。
Q 中国高官によると、9・7%成長のうち、8%分は環境問題で失われている。日米台が中国の環境問題に影響を与えられるか考えるべきだ。タシク 毎年10%前後で成長する中国は十分資金があり、環境問題に日米台の資金を必要としない。ただ、中国はマスコミを統制、国民は知るすべがない。昨年末、河川への有毒物質流出時も10日間、秘密にされた。われわれが秘密裏に環境保護運動を展開。中国の民主化につなげられないか。
サコダ 東シナ海では日中のガス田開発問題が先鋭化。この地域はますます政経不可分になりつつある。日米中はエネルギーの三大消費国だが、エネルギー源確保が、既に安保の計算の一部になっている。
阿久津 中央アジア諸国など加盟の上海協力機構(SCO)は安保協力組織であるが経済・エネルギー協力の側面も強まっている。反米の流れとも一致。注視すべきだ。
陳博志 重要な半導体製造拠点だった10年前、台湾の安全は「シリコンの楯」で保障されていると、某雑誌が指摘した。「中国が台湾を攻撃すれば、他国は半導体供給源を守ろうと台湾を支援する」と言うのだ。翌年、台湾政府が「台湾はエレクトロニクス産業を米国と開発してきたので、中国経済にさほど依存しない。台湾は中国を恐れない」との調査結果を出した。この後、中国は台湾の半導体産業を吸収。現在、エレクトロニクス産業のほとんどが中国に移転し、中国は台湾の半導体メーカー4社中、3社の誘致に成功した。台湾の「シリコンの楯」は崩れ安保上、憂慮すべき事態となった。
チャプリン 重さ50キロの岩が、動き出しても止められるが、落下し勢いづいた岩に立ちはだかるのは危険。日米は岩の勢いが増すことを阻止せねばならない。落下しそうな岩を止めなかった故に、事態が手に負えなくなることは避けたい。
金田 日米にとり台湾は民主主義のとりでで、日本の生命線・海上交通路の枢要拠点。4つの「もし」を考えた。1つは中国が台湾周辺で軍事圧力をかける場合で、海上交通に大きな悪影響を与える。2番目は、台湾の民主化が定着しないか後退して非民主的傾向を強めていく場合。地域の非民主化も加速、日米も地域への影響力を失う。3番目は、台湾が非民主主義国にコントロールされる状況。地域で政治・安保上の大混乱が起きる。最後の「もし」は、台湾への侵略で、米国が関与をためらうか失敗すれば大変な事態。これらを想定すると、日米の台湾や東南アジアにおける政治、経済、安保での深い協力・支援、または日米台の実質的外交かそれに準じた関係強化や情報、技術、装備などの交換が必要となる。
羅 中国は軍事圧力とソフト戦略を併用。台湾の中国市場依存を強めさせ、政治的まひ状態にすべく法律、世論、心理の各分野で“戦争”を仕掛けている。台湾海峡の軍事均衡が変化すると、必要なら中国は攻勢に出る。海峡の軍事均衡ばかりか経済・政治・外交上も中国有利で、日米とは友好関係では不十分。政権交代の影響を排除するため、日米台のパートナーシップを制度化すべきだ。
頼 日米台を個人的関係でなく制度化し安保、政治、経済協議の場を作る必要がある。日米台間で、FTA締結など経済関係強化や政党レベルの制度的対話も必要だ。中国に法に従う民主的環境を創るよう、3カ国は努力すべきだ。
蔡 台湾として、航空機・船が、アジア太平洋地域や台湾海峡を自由通航できるよう貢献、米国主導の大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)にも参加したい。APEC(アジア太平洋経済協力会議)を経済から安保協力にも拡大、アジア版NATO(北大西洋条約機構)が形成されればと思う。
長島 台湾との捜索・救助活動や海上の安全のための共同演習は十分考えられる。ところで、3つの圧力がある。1つは台湾内の「独立などと過激に言わないで。生活が大事だから中国と仲良くね」との圧力。次は経済・軍事的な中国の圧力だ。米国の圧力も心配。米中関係は72年、79年、82年の3声明で成り立つが、声明と米指導者の発言は随分ずれている。例えば、98年のクリントン大統領訪中前、ジョセフ・ナイ米元国防次官補が論文で「米国は台湾の公式の独立宣言への反対を明確に表明すべきだ」と書いた。クリントンは▽2つの中国は認めない▽台湾独立を認めない▽国際機関に台湾を入れない−という「3つのノー」を掲げた。パウエル国務長官(当時)でさえ2年前、それまでは台湾独立を「支持しない」だったのに「反対」だと。さらに、「平和的解決を望む」も「平和的統一を望む」と踏み込んだ。米国の台湾への圧力は高まっている。
Q 米国の対中政策はコンテインメント(封じ込め)かエンゲージメント(関与)政策。状況により、一方の要素が強くなるから「コンゲージメント」政策。米中枢同時テロ後、米国の対中政策はより融和的な関与政策面が強くなったが。シュライバー パウエル氏は「対中関係は大変複雑で、1つの標語で表現できない」と述べた。中国封じ込めは成功しないが、一部行動の封じ込めは米国の目標の1つ。悪い結果に備えることは必要だ。
長島 日米同盟の観点で言えば、集団的自衛権や周辺事態法であいまいに残された部分を明確にすべきだ。日本がこの問題で逃げていると、朝鮮半島や海峡での紛争など「周辺事態」が発生したとき、本当に同盟が機能するのか日本人にも、台湾人にも分からない状況を引き起こす。例えば公海上で日米が一緒に活動中、戦闘地域になったら「すいません。私はこれ以上前に進めないので離脱します」で同盟が維持できるのか。中国に「きっと日本は、あいまいにやり過ごす」と思わせるのは、中国の台湾侵攻に対するゴーサインになりかねない。
石破 集団的自衛権が使えないなど、日本には不思議が多い。「武器輸出3原則」とは何なのか。日本人は武器輸出を大きな悪と考えるが、そうではないという、普通の国の認識を持たないといけない。
サコダ なぜ、日本は集団的自衛権を行使してはならないのか、大きな不思議。英BBC放送と米大学の各国対象世論調査で「世界に最も良い影響を与えている国」の1位は日本だった。ODA(政府開発援助)や自衛隊の海外派遣が評価されたのだ。グローバルな日本の影響力の源はまさにソフトパワーだと証明された。軍事によるものもあるが、ソフトパワーという形でハードパワーが活用されている。台湾は教訓にすべきだ。
石破 日本の政治家は軍事にほとんど知識がなく大問題。「防衛庁長官、北朝鮮を何年でやっつけられるか」と国会質問され、「何年かかっても、やっつけられません」と答弁した。航空自衛隊のF15戦闘機は迎撃機で、攻撃機としての能力を与えていないし、訓練もやってはいけない。海兵隊のグアム移転など米軍再編経費3兆円は多寡にかかわらず、日本が払わなければならない。米国は日本を守る。日本は米国を守ることができない。その代わり、極東の平和と安全に寄与するため、米国は日本の施設・区域使用が許されている。こんな同盟は世界にない。これでいいのか。集団的自衛権の行使を認めることは真の独立国家になること。アーミテージ元国務副長官も「認めるか否かは日本人が決めること」と言った。米国に言われて決めることではないが、米国的にはどちらがいいのか。憲法上認められている打撃力を外国に依存する国を本当に米国が信用し、同盟国として今後もやっていくのかといえば違うかもしれない。核抑止力も含め、いかに日米の国益を重なり合わせるか議論すべきだ。そんなものは見ない、考えない、聞かない−と、日本では、核抑止力の議論はしてはならぬことになっている。議論しないと、この地域の21世紀は本当に危ない。
※本記事は、産経新聞2006年07月25日大阪版 より抜粋しています。