解決にはもう一世代かかる

2005年9月 中央公論 掲載

岡崎久彦


 歴史的怨恨は半ば永久的に残る。日本が朝鮮半島を支配した時に発見したのは、その地の伝承の多くが文禄・慶長の役の記憶だったという。ボストンの観光案内人の説明から英国の圧制の歴史を消すことは不可能である。
 要はそれが国家間の外交問題でなくなればよい。歴史上、通常、戦争の記憶は一世代で、政治家、外交官の手を離れて歴史家の手に移る。日本でも戦後一世代を経た一九八〇年という年を取ってみると、その一年間、戦争の過去が問題となった記録は、日本国内、近隣諸国、欧米の如何なる論説、文献にも皆無である。この問題が復活した端緒は、これも全てのケースで証明できるように、日本国内の反政府運動が外国に持ち込まれた結果である。
 この解決にはもう一世代、即ち、問題の復活から三〇年、二〇一〇年代までかかろう。外国に御注進して干渉を招くという行動を破廉恥と思わない、戦後日本が生んだ異様な世代が社会の中枢から消え去るまでである。




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